0310 遠くのようで身近な

 

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古本屋で働いている同級生が、本を何冊か貸してくれた。

彼女の選んでくれるストーリーはどれも温度感、人間味があって、

私にとって新鮮な作品ばかりである。

中でも一際心奪われた作品がこちら、巷で話題の

夫のちんぽが入らない | こだま |本 | 通販 | Amazon

気になっても立ち読みできないやつ。タイトル的に。

本の存在をもともと知っていた方は、

「作品名に反しておしゃれなデザインだな」と感じるだろうけど、

初めて作品を目にした私は「デザインに反してアグレッシブな作品名だな」と

いう感想を持っていた。

書店で見かけてから、気にはなったものの

自分で買う気合いもなかったのでスルー。(というか興味が湧かなかった)

古本屋の彼女が貸してくれたことがきっかけで、

先日やっと読むことができた。

(ネタバレ要素含。)

■夫のちんぽが入らない

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これは"結婚"という名の怪我をした、

血まみれ夫婦の20年史である。

帯にある松尾スズキさんの言葉。

確かに、”夫婦”が起点になった物語である。

だけどそれ以上に”家族”という存在が、

この物語の根として植わっているのではないか。と強く感じた。

 

■抜き出し

忙しさにかまけてチーズフォンデュを一度も食べさせて

あげなかったことを悔いだ。

私は夫の望むことすべてを経験させてやりたい。

 -チーズフォンデュを食べたことがないという夫。

同僚にからかわれ、落ち込みながら帰って来る夫の姿をみた作者が、

チーズフォンデュを食べさせてあげる、というシーン。

(この作品では貴重なほのぼのポイント)

「夫にチーズフォンデュを食べさせてあげたい。」

こんな些細なきっかけが、

「私は夫の望むことすべてを経験させてやりたい。」

なんて壮大なテーマに広がるのだ。

愛ってすごい。夫婦ってすごい。

と思う反面、ちんぽが入らないことの後ろめたさから来る、

罪意識が着火剤になっているのかな。とも思った。

(男女関係になる前に、一緒に食事をした場面の方がキラキラと書かれていた。)

 

私は違うから。私はあなたの話を聞き、約束を守るから。

--略--

その厚かましさや思い上がりこそが大人の嫌らしさなのかもしれなかった。

 -大学卒業後に小規模学校の教師になった作者。

新任早々、前年度学級崩壊を起こしたという問題のクラスを任されたのである。

学級崩壊へと、クラスを煽動していた少女ミユキとの出会い。

自分に、敵対心を持つ生徒への「誠実」な向き合い方とは何か。

暗中模索する過程で、作者が発する心の声は、

か細くて頼り甲斐がないんだけど、それこそが誠実に感じた。

作者が生徒と奮闘しているシーンを読んでいる途中、

ふと自分の小学生時代を思い出しました。

全然キレイな思い出なんてないけれど、

今でも尊敬している先生が一人だけいる。

(毎年、年賀状を送り合う仲。ちなみに担任には一度も年賀状もらったことない)

やはり、幼少時代に関わる大人っていうのはいつまでも

心に残るものなんだと思う。(よくも悪くも)

 

過去にこだわり続けたところで何も始まらないのだ。 

 -文中にしれっと出てくるけど、結構心に刺さった。

 

■まとめ

案の定、後半につれて書くのがめんどくさくなっちゃいました。

この本、読んだあとの副作用がすごい。

作者の生きる日々には、フィクションのように

ハッピーエンドなんてない。

だから、読んだあとの余韻が朝まで残っていて、

頭がぽかーんとしていた。

タイトルからお察しだけど、作中に何度か性描写がある。

このストーリーには、必要不可欠な要素だった。

たった195ページほどの本に、ぎゅっと圧縮された人生。

「夫のちんぽが入らない」という言葉は、

作者が、自分に見つけた欠損部分を、

少しでも浄化させるための常套句なんじゃないか。

だから正解の作品名だと思いました。

一言で収まる感想が見つからないけれど、読んでよかったです。

(下記リンクから試し読みできます)

www.fusosha.co.jp